スローデス

 

糖尿病の恐ろしさは、進むとそれが原因で脳梗塞、心筋梗塞、白内障を引き起こすゆえ、注意するように言われる。
ここ20年余の間に、糖尿病が引き起こすこの三大疾患を全てやってのけた。そして現在は、胸にテフロンを張り狭心症の発作に至らぬように気をつけながら、毎日を過している。坂道、階段を避け、急がずあせらずにすごしている。それでも狭心症の殺気を感じたときはニトログリセリンの舌下錠を服用しての生活である。
そういう状況下、毎日充実感のある生活をしている。
糖尿病の恐ろしさは、自覚症状がないことであると言う。
境界型の糖尿病を患ってもう何年になるであろうか。おそらく、少なくとも30年余になるであろう。その間まったく自覚症状なしに、糖尿病が進んできたわけである。その結果体中の毛細血管の劣化が進み、その機能を果さなくなってきている。それが原因でいろいろな不都合が体の各地で発生してくるようになった。
体中に張り巡らされた毛細血管のネットが劣化(駄目化)すると何が起こるかと言うと、これはもう枚挙にいとまない。
下肢部の毛細血管に駄目化が起こると、吹き出物、などの皮膚疾患の回復が尋常の速さで行われない。時間がかかるし直った後に跡が残る。さらに進むと下肢切断の憂目にあうことになる。現在のところ、下肢はまだ機能している。
腎臓での毛細血管の駄目化は、腎機能の低下となり、尿蛋白の異常な増加となる。それが進むと透析となる。現在は透析まで入っていないが、すぐそこまで来ている。
眼底の毛細血管に駄目化が起こると、緑内障まで進む。その前段階として、眼底出血、黄班浮腫などが起こる。現在、眼底出血、黄班浮腫が起こり右目の視界の3分1程度が失われている。8月17日に眼球の裏側に薬を注入する手術を受けた。黄班浮腫の治療のためである。効果が出るのは一ヵ月後くらいで、効果があるかどうかやってみないとはわからないという。まぁ右目が駄目になっても片目あればと高を括ったら、両目がやられるかもと先生に脅かされた。
老化現象は階段的に起こるようで、あるとき突然ガクッとそれまで出来ていたことが出来なくなる。食事の量だ劇的に減る。早足が出来なくなる。思いもんが持てなくなる。歩幅が小さくなる。物事が面倒になる。等々が突然変化するのである。それの次の段差が1年で起こるのか、3年後なのかは不明である。ただただ毎日の所作動作をやり続けることにより、少しでも先送りをする努力をするだけである。それで、毎日1万歩から2万歩歩き続けている。惰性でも良い、毎日歩いていれば、階段降下現象が騙されて先送りされるかもしれないとの期待をこめてである。
その階段の段差が、生命線を越えると死ぬことになるのであろう。
老化現象は階段的に進行するようだが、毛細血管の変化は階段的ではなく、日々劣化が進んでゆくようである。言って見れば、徐々に日々死んでいっているのであろう。これをスローデスと名づけた。日々徐々に部分部分が死んでゆく自分の体を想像している。一日一日死に対して接近する自分に焦りはない。部分部分の死が固体の生命を維持できないところまで進んだときに、館長の生命が消えることになるのであろう。スローライフの対極にあるスローデスを楽しみながら日々をすごしてゆくのが、今の自分である。

2010/8/20

BACK HOME