インド日本商工会 自動車部会 新春パネルディスカッション

2007/1/22

『インド自動車産業のリスクと可能性』
インド日本商工会の自動車部会の新春パネルディスカッションが1月20日17:00より21:30までホテル日航のキャピトルで開催された。

デンソーの石田さんの司会の宜しきもあり、近来珍しい面白い会であった。パネリストは

HONDA Motorcycle nd Scooter India Pvt. Ltd. 社長 青島幸弘
Maruti Udyog Ltd. 副社長 永尾博文
Toyota Kirloskar Motor Pvt. Ltd. 社長 豊島敦
Yamaha Motor India Pvt. Ltd. 社長 石川知孝

で、くじ引きにより永尾、豊島、青島、石川の順で基調報告が行われ、それぞれの報告のあと活発な質疑が行われた。

発言の順にとらわれず、気になった部分をメモの形で皆様にお伝えする。

*トヨタ・マルチが、2010年には200〜230万台までになろう。(トラックを除く)

永尾副社長
  その理由として挙げられるのは以下の諸点
    高い経済成長率
    小型車に対する優遇税制
    カーファイナンスに金利が下がったこと
    二輪車から四輪者への転向者の増加
  懸念材料をあえて挙げれば(殆ど起こりえないが)
    若年就労の困難
    インド経済のバブル化
    インド政権の安定
豊島社長
  インド人が優れている
    語学力、数理、外向性
  課題として人材(労務問題、人材の流動、未熟な労働力、労務費の高騰)、インフラ、 政治の安定性

* 労務問題

トヨタ豊島社長
  2001年に2回、2002年、2006年にストライキを経験しているが、対応 策としては、「相互信頼」を目指した愚直、地道な徹底した活動しかない。そのた めに、Work Place Improvement活動、コミュニケーションを良くするこ と、昇格を含めたワークライフプランを導入している。実際にチーム員からチーム リーダーに昇格したものが179名いる。
組合とは毎年賃金改定交渉をしている。2年3年ごとと言う考え方もあるが、毎年 の変化に対応して、しばらくは1年更改ベースでやっていく。
マルチ永尾副社長
  2000年の暮れから3ヶ月のストライキがあった。本社からの指示は一歩もひく なとのことで、その指示に基づき、組合員以外、関係先からの応援、それに誓約書 を入れた社員による生産を行い、ストライキ中も最低限のサプライを続けた。結局、 ストライキをした側の全面敗北で決着を見た。
企業内組合であることが寄与している。
コミュニケーションが大切である。
ホンダ青島社長
  警察まで介入した争議があった。それまでは、IRの専門家が社内にいなかった。 その後、タタよりIRの専門家を入れて、その後はうまく行っている。IRの担当 のやっていることを見ると、問題が起こってからの対策ではなく、起こらないよう に対策を講じている。それは、コミュニケーション、それに忍耐強さである。彼は、 毎週のように経営側、労働者側と地道なコンタクトを行い、悪い芽を摘んでいく努 力をしている。その忍耐強さには頭が下がる。

* インド

マルチ永尾副社長
  インド人は優秀である。 訓練によりインド人が伸びてきている。
そのインド人を活用している。
法の整備が出来ている。
インド製の部品が外国に輸出され始めている。GM
ヤマハ石川社長
  デッドコピー商品がない。
人口構成がピラミッド状で、若い購買層が育ってゆく。

* 補修部品

マルチ永尾副社長
  インドにおける補修部品の供給は5%で、世界的な平均である。パキスタンの場合 は1%を切っていた。
ホンダ青島社長
  インドにはイミテーションがない。
インド製部品の品質が良い。世界的に遜色無い。
インドのメーカーBajaj, TVSともに品質的に問題ない。

* 中古車マーケット

マルチ永尾副社長
  2002年から下取りをしている。
トヨタ豊島社長
  マルチの制度を見習わなくてはとの社内議論あり。

* トヨタの目標

生産台数 シェアー 目標台数
2005 100 5% 50,000
2010 200 10% 200,000
2015 400 15% 600,000
       

このためにはダイハツの小型車を入れたい。

* 現在の生産台数ランク

1.   Maruti 44.6  
2.   Tata 16.3  
3.   Hyundai 12.9  
4.   Mahindra 9.1  
5.   Honda 4.2  
6.   Toyota 3.6  
7.   Ford    
8.   GM    
9.   Skoda    
10.   Fiat    
11.   Daim-Ch    
12.   Nissan    
  日系合計 52.4万台  
  100万台の内日系が50%以上を占めている。

* 正社員とコントラクトレイバーの比率(会場のヤマハよりの質問)

ホンダ青島社長
  正65%それ以外が35%。給与は60%。180日で入れ替えている。
マルチ永尾副社長
  正ラインについているのは正社員が多いが、掃除、メンテなどにコントラクトレイ バー多い。人材派遣会社からの派遣であるから、継続性は問題ない。
トヨタ豊島社長
  南は製造業が少ない所為か法の適用が厳しい様で、正式のラインに臨時工を使うこ とが禁止されている。従い正社員が75〜80%くらいである。弾力的な運用がし づらい。
 

* ホンダの哲学

需要のあるところで生産する
  二国間のFTAなども考慮の余地はあろうが、リードタイム、マーケットの変化へ の対応、需要地での生産の方針は変わらない。
4輪は2010年には15万台生産。
2輪は2007年540万台生産。
   
取引メーカー
  Motorcycle 413社
  Automobile 100社
  Power Products 112社
販売店
  Motorcycle 900社
  Automobile 56社
  Power Products 741社
労働問題
  HHML
    1987年ダルヘラ工場でストライキ2ヶ月
1989年ダルヘラ工場でストライキ1.5ヶ月
2006年労働争議で4日間閉鎖
  HMSI
    2005年労働争議
  HSCI
    2004年組合設立
  HSPP
    1996年ルドラプル工場でストライキ1.5ヶ月
1999年ルドラプル工場でストライキ3ヶ月
2002年ルドラプル工場でストライキ3ヶ月
     
ホンダは良いパートナーを選んだ
  二輪:Dr. Brijmohan Lall Munjal
四輪:Mr. Siddharth Shriram
   
2006年9月HMIを設立
  現在のHHML, HMSI, HSCI, HSPPそれに加えてのResearch 部門の相互有効活 用を考えて、Honda Motor India Pvt. Ltd. (資本金1.5億ルピー)立ち上げた。ホ ンダ内部での無駄の省力化に向けての第一歩と受け取れた。
 

館長の所感:
自動車部会の新年会をかねた今回のパネルディスカッションは、今まで参加した会の中で中身の濃い面白い会であった。壇上に座った4名の方々が、誠実に、正直に、しかも隠すべきは隠しながら情報を開示してくれたことに謝意を表したい。

今日、触れられなかった点にも注目を払いたい。リスクといえば、カントリーリスクと為替リスクが念頭に浮かぶが、それに対する言及は誰の口からも無かった。それは、インドのカントリーリスクが殆ど無いと出席者が考えていたこと、為替についてはルピーの対ドル堅調が一般的な理解となっているからに他ならない。それを前提に議論は進んだことを指摘しておきたい。インドは安定した国であることを出席者が前提としていたのであろう。

次に指摘したいのは、個々の問題は色々あろうが、それにはそれぞれ苦心の対応をしながら、答えを出してきた自信が感じられた。旨く行かない点を、インドの所為にする会社が一社も無かったことである。えてして、インドの悪口を数え上げる会が多い中で、過去の道程の経験を踏まえた自信が、将来の夢を紡ぎだしている点で、自動車部会は突出している元気な部会である。

労働問題は避けて通れないもので、それに対応する元気と根気があったことを評価したい。その対応には、各社各様で、王道がないことをいみじくも示していた。ホンダのインド人IR専門家への評価、マルチの強気の姿勢と企業内組合の評価、トヨタの時間をかけてもトヨタ哲学を浸透させ、背丈に見合った賃金を理解させるために毎年でも労使が話し合い続けるという姿勢と、それを実現させる施策の数々、ヤマハの日本人自らの労使の話し合いによる説得、インドの多様性を見るように答えに多様性が見られた。いずれにせよ、各社とも労務・労働関係の仕事があることを認識して、それに対して対応する自信を垣間見た。

会の趣旨が、可能性とリスクの解明であったが、懇親会での各社の反応は、可能性は正式に今日話したものより、大きくなるのではないかと見ていた点と、リスクや懸念はあえて探して書き出したもので本来は懸念材料は殆どないというのが正直な感触であった。

最後にくどいが2点を繰り返すことをお許しいただきたい。

1. 需要のあるところで生産するということを、4社とも実践している。
2. 仕事がうまく行かないことを、インドの所為にしていない4社はインドで成功している。
 

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