ミネラル・ウオーター騒動

2003/04/13

ニューデリーのプラガティ・マイダンと呼ばれる常設見本市展示会場で、毎年インドは国際見本市を開催する。二千年の見本市でジェトロの相談員として日本コーナーに詰めていたときの話である。

J兄弟は事業を始めて五年、少々金が出来たので、日本と何かやりたいので知恵を貸してくれと目を輝かしてブースに入ってきた。非常に真面目な感じで、どのくらいの金を用意しているのかと聞くと、約七十万ルピー(百七十五万円)と答えた。

正直びっくりして、一桁増やしてから、何をやりたいかを探してから出直すようにと、噛んで含めて丁寧に回答すると、非常に真面目に聞き取りメモも取っている。こちらも興味を感じ、何で儲けたのかと聞いてみた。
 
デリーの西北のカロルバーグと呼ばれる一大商業地域で、ミネラル・ウオーターを製造販売しているという。市場占有率は高いというが、聞いたことのないブランドなので首をかしげると、説明してくれた。いわゆるペットボトルではなく、コップ状のものに水を入れパッキングをして、結婚式等のパーティ用に販売している。

インドの結婚式は数千人が呼ばれることが珍しくなく、そこで出す水の量は膨大なものになる。そこでさらに、何処の水を詰めているのかと聞くと、いともあっさり自分の庭の井戸の水と言ってのけた。深山幽谷の水をイメージしたのとはまったく違う、一 大商業地区のど真ん中の水をくみ上げつめていたわけである。

今年二月初めインドのNGOの科学環境センターは、市販されているボトル入りのミネラル・ウオーターの水質検査結果を発表した。

三十のブランドのうち輸入一社を除き他は全て国際基準に達していないというショッキングなものであった。五サンプルには殺虫剤の残存物が国際基準の数十倍から百数十倍入っていると発表された。科学環境センターのインターネットを通じてのこの発表を、インド科学技術省は二月十日に追認した。

インド中でパニックが起きた。食糧消費省のシャラット・ヤダブ大臣は19日、飲料水製造工場1ヶ所の閉鎖とその他七ヶ所の工場の製品について、ISI(日本のJISに相当する)マークの使用禁止を命令した。これら工場で製造された飲料水の品質がインドの基準を満たしていない故、ISIマークが使用出来ないということで、市場では販売出来ないことになった。

 工場閉鎖の命令を受けたのはペプシ コバルチ工場であり、ISIマーク使用禁止命令を受けたのは、ビスレリ インターナショナル バンガロール、イオン イクスチェンジ ナビ ムンバイ、ヴァブハブ アクア ゴタカパル ムンバイ、コタリ ベヴェレージ シャープル、ターン スラット ベヴェレージ ダドラ、サルダル ミネラルウォーター ジャムシェドプールである。

これらブランドの中には日本人をはじめとする諸外国人が日常的に飲用していたものもあり相当ショッキングはニュースとなった。○印の輸入の一社はフランスのぺリエールで一人勝ちの状況でプレミア付で市場で取引された。

インド政府は、四月一日より、壜詰飲料水に関し新しい基準を適用することを二月二十日発表した。
 それによると、水のサンプルをテストする方法は国際的に認められた方式でなければならず、国際的基準に従ったものであるとしている。

 また一方、スシュマ・スワラジ健康相は従来、ビン詰の飲料水を製造していたメーカーは、インド基準局(BIS)の基準に従って製造していたので、それらメーカーに対して法的措置を取ることは出来ないと下院で述べた。

 現在は新基準によるミネラル・ウオーターが従来どおり売られていて、喉元を過ぎたようである。J兄弟の商売はどうなったか心配である。

 今回の騒動の所感を付け加えると

一.インド政府の対応がすばやくまた公正であった
二.インドの国際化がまた一歩前進した
三. インド人には儲けるために知恵を常に働かす迫力がある
 

BACK HOME