韓国企業のインド進出状況

2002/1

1.韓国のインド進出の流れ

韓国のインド投資、認可ベースは、1991年61.5百万ルピーで小規模であったが徐々認可ベース額を増やしてきた。1992年(394百万ルピー)1993年(293.3百万ルピー)1994年(1,068.5百万ルピー)1995年(3,141.9百万ルピー)1996年(32,209.21百万ルピー)となっている。
1997年末の韓国経済危機により1998年の対インド投資額は減少したが、1996年、1998年、1999年に大規模な投資申請がなされ、インド自由化元年である1991年から1999年11月までの投資額累計は認可ベースで日本のそれをうわまわりアメリカ、モーリシャス、イギリスについで第4番目となっている。

91年より99年末までの累計順位
順位 国名 対インド投資額
 (百万ルピー) 累計(%)
1 アメリカ 461,845 22.02
2 モーリシャス 221,983 10.58
3 イギリス 159,767 7.62
4 韓国 96,901 4.62
5 日本 91,077 4.34
(5月9日付東京三菱銀行報告書より)

韓国の対印投資額が急増した背景は、大宇・現代の乗用車に対する進出、サムスン・LGの家電に対する大規模投資である。
99年6月現在、韓国企業の進出はニューデリーを中心とする北インドに50社、ムンバイ地区に16社、チェンナイ地区に30社、バンガロールに5社、合わせて約100社となっている。(その後の6ヶ月で約10社がニューデリー地区で進出してきている。企業の数は増えているが、これは投資を伴わない商社がほとんどと言われる。)日本企業の進出数は約260社であるから、韓国企業の進出の規模は、1社当たり日本企業に比べ大きくなっている。韓国の進出は、大宇、現代、サムスン、LGの四大財閥を中心として、自動車、家庭電気製品(いわゆる白物と呼ばれるものと、テレビ、音響、パソコンなど)に集中していて、テレビ・雑誌などを通じて非常に巧くマーケティングを行っている。

2.四大財閥を中心にした進出

在インド韓国大使館のホームページは其の巻頭に大使のメッセージを載せて、韓国のインド進出は四大財閥を中心に据えた進出であることを堂々と述べ、官民一体の進出の姿勢を覗わせる。Daewoo・Hyundai・LG・Samsungの四大財閥の進出状況は次ぎの通りである。

(1)Daewoo 関連 7件
Daewoo Constructions India Pvt. Ltd.
Daewoo Constructions
Daewoo Corporation
Daewoo Motor(I) Ltd.
Daewoo Power Ltd.
Daewoo Telecom Ltd.
Rico Daewoo Precision India Ltd.
韓国本国で整理の進んでいるDaewooは、インドでもその影響を受け、その帰趨が懸念されている。自動車関係に付いては、販売代理店は本年始めもHappy New Yearのビラを店頭に張り出し通常どおり営業を行っているようであるが、そのビラも手書きでみすぼらしく見えるのは気のせいではないようだ。本社の内部では各種の問題が起こっているようである。まず、工場に付いては、フォードとの間で交渉が行われたがうまく行かず、現在GMとの間で交渉が行われていると言う。又、かなりの幹部のインド人スタッフがいち早く見切りをつけ会社を辞めたため、組織ががたがたと言う指摘もある。Daewooの工場のあるグレーターノイダの開発公社も先行きについて心配している。その他のDaewoo関係についても先行きについては不透明である。自動車その設備投資の巨大さを考えるとどこかに身売りする事になろうが、他のプロジェクトは閉鎖の憂目を見るものも出てこようと噂されている。新聞・雑誌に最近本国で起こっている事とインドの合弁は関係ない旨の広告を打っているが、見せられば見せられるほど繕っている感じも有り、本当であれば良いが、インド人も首を傾げている。

(2)Hyundai関連 6件
Hyundai Construction Co. Ltd.
Hyundai Corporation
Hyundai Electronics Ltd.
Hyuindai Heavy Industries Co. Ltd.
Hyundai Motor India Ltd.
Hyundai Unitech Electrical TransmissionLtd.
現代自動車は、その当たり商品である、サントロ(1000cc)が月ベース5000台を売りきっていると言われ、年6万台の計算は十分採算ラインを超え好調である。市場での評判もタタに比べ悪くなく生き残りの確率は高いと言える。自動車の好調のおかげで、他の分野については余り話題になっていないようだが、おおむね健闘していると言うよう。

(3)LG関連 5件
LG Chemicals
LG Construction Co. Ltd.
LG Electrinics India Pvt. Ltd.
LG Hotline CPT Ltd.
LG Int'l Corporation
家電関係マーケティングを上手に行って、市場を上手に収めている。その品質については、コンピュータなどの最新技術製品に関しては、必ずしも日本製品やアメリカ製品に比べ良いとは言えないものもあるが、白物家電中心にマーケットシェアはかなりのものである。マーケティングに見るべきものがある。LGグループは土木・建設関係にもその触手を伸ばし、グジャラト州のスーラト〜バドーダラ間の高速道路拡張工事、チャンディガール近郊の高速道路工事を落札している。しかし結果まで見ないとその採算性に疑問ありと指摘している人もいる。

(4)Samsung 3件
Samsung Crporation
Samsung Electronics Co. Ltd.
Samsung India Electronics Ltd.
コンピューターのカラーモニターでインドの40%を占めていると言われ、この分野での覇は譲れぬ考えで、今まで輸入していた、モニターの大部分を2001年6月には国産化に踏み切る意気込みであると言う。この分野では地歩を固めたといわれている。家電製品の評判は悪くない。

3.今後の動向

日本のJETROに当たるKOTRAはニューデリーとチェンナイに事務所を開いている。近い将来ムンバイにも開設の予定があると聞く。韓国大使館の経済担当官は、今後は、ITに関する進出がバンガロールを中心に展開されることを期待している。すでにソフトウエア-関連事業でLGとサムスンが進出している。日本と違い韓国のIT産業は言葉の問題がないといわれ、英語で良いところが日本のITと違うと言う指摘もある。

4.問題点

インド進出韓国企業も日本企業と同様に個人所得税問題に頭を抱えている。特に大手商社は巨額なペナルティをいかに軽減するかに腐心しており当局と係争中と言われる。又当地の弁護士事務所、会計事務所、コンサルタントの評判は、契約の好条件と実際の支払い時の乖離が著しく、出来る事なら相手にしたくないとコメントするところさえ出てきている。韓国流のJUST DO ITがインドとの交渉時間の短縮に寄与しているものの、その後のインド人側との関係が必ずしもうまく行っていない点が問題と言える。「韓国流とインド流は、そりが合わないであろう」とかねてから言われてきた点が顕在化してきていると言えようか。

5.韓国人社会

 在インド韓国人はデリー地区に700人、ムンバイ地区に200人、チェンナイ地区に300人と約1,200〜1,300人となっている。一方在インド日本人は約3,500人と言われている。日本人学校は現在補習校を含め4校あるが、韓国人学校はない。韓国料理の店は、チェンナイに2軒(1軒は非常に評判高く日本人も良く利用している。)、又ニューデリーには正式にレストランの許可は無いがゲストハウスの食堂を公開しているところが2箇所ある。Korean Residential Association(日本人会に当る組織)がニューデリーにあり会長は玄東和(Hyoung Don Wha)氏である。会員は約50社である。玄東和(Mr.Hyoung)氏は1953年朝鮮戦争の北鮮側の捕虜としてアメリカに連行され、本国に帰るのを拒否した結果、国連の斡旋により、メキシコとインドの選択を迫られ、インドを選択した2名の内の一人である。現在70歳で小さな貿易会社を営み韓国向けにインド製品を輸出している。47年インドに滞在していることになる。

6.韓国のインド進出の背景

 韓国の対インド投資が増えた理由は、21世紀のインド市場の拡大を見込んだ経済的な理由が第一であることは当然であるが、それ以外の要素も覗われる。まず意志決定の形が挙げられる。インド企業のトップダウンの意志決定システムは日本のボトムアップと真っ向から対立する場合が多い一方、韓国式の即決システムはインドのトップダウンのシステムと相通じるところがあるようだ。在ニューデリーの韓国大使館のこれを比較して、『日本人は石橋を何度も叩いて渡るが、韓国人は石橋を見て、行けると判断すれば大挙して渡る。』と言っている。
 次に、韓国の企業のインド進出は、アメリカとインドの距離感を反映している点である。アメリカとインドの関係が改善するのに比例して韓国の四大財閥を中心とした投資が急増している。韓国の経済危機のさなかにも対インド投資は其の趨勢を変えず続けられてきているのは、21世紀のアメリカとインドの関係を先取りした先行投資を行っていると見える。
 クリントン大統領が5日間インドに滞在してインド・アメリカの蜜月を演出したことは、インドの21世紀における地位をアメリカが世界に対し保証したことを意味している。国策としてインド市場を考えているように見える韓国は、今後一層官民一体のインド進出に拍車をかけて来る結果となりそうである。

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