十四年連続良好モンスーン

2001/7/16

 ニューデリーの夏は、4月に始まり六月末にモンスーンに突入して終わる。日本のお彼岸の頃から温度は日に日に上昇を続け、三月初めには暖房を入れていた車が、末には冷房無しでは走れなくなる。気温は四十度を超える。四月の中旬には四十二度を超えて、人間の思考能力の限界を超える。四月末から五月六月にかけて最高気温は四十五度を超えることが良くある。この期間は、インドでは日本人学校も含めて学校は夏休みとなる。長期休暇を取る人も多い。

 ニューデリーの今年の夏は百二十年ぶりの冷夏であった。五月になると一週間に二三度雨が降り気温は三十度台を維持し、四十度を超える日は稀であった。割合乾燥しているニューデリーでは、四十度にならなければ問題はない。四十二度まではなんとかものを考える事が出来る。そう言う意味では、デリーは夏が無かったような感じであった。良い意味での気候の異変であった。

 恒例であれば、インドでは、六月一日モンスーンはケララ州に上陸する。その後ゴア、ムンバイ(旧ボンベイ)を経て、六月二十九日にニューデリーに到着する。今年は、ケララ到着も若干早かった。ニューデリーのモンスーン入りも約1週間早かった。

 気象庁の発表によると、今年のモンスーンの予報は「良好」とのことである。「良好」と言うのは雨がたくさん降るということである。インドはモンスーンが良ければ、すなわち、雨が沢山降れば豊作が約束される。今年もモンスーンの良好が太鼓判で、十四年連続の豊作が予想されている。

 インドのモンスーンは局地的な豪雨を伴う事が良くあり、日本のテレビでインド洪水の絵が報道される。局地的な豪雨は、ずいぶん悲惨な映像を創り出すが、インド全体の豊作に比べれば被害は映像ほどではない。堤防が決壊する洪水ではなく、静かに川が溢れての洪水で、大体三日もあれば水は引く場合が多い。絵柄ほど悲惨ではない。
 インドの穀物生産量は昨年二億トンを超えた。自給のためには一億五千万トン必要と言われる。数千万トンの余剰が出ている。これの一部は輸出に回され大部分は備蓄になるが、虫とネズミに食われるものが全収量の2割に及ぶと言われていて、どうも備蓄方法は評判がよくない。また政府が行う輸出は、特に小麦の質が悪く国際的に顰蹙を買い、国際的に良い値段が確保できないで、買い付け価格を下回る値段でしか輸出できず、輸出を増やせば赤字が増えるので評判は今一である。

 インドの今年の冷夏と良好なモンスーンはインドに取り大変結構な事で大歓迎される。しかし業界によっては濃淡があるようである。セメント・肥料・タイヤ・鉄鋼・繊維・自動車・家電業界では、今後三〜四ヶ月売れ行きは伸びると期待している。特に肥料業界はよいモンスーンは肥料の売れ行き直接関わると大歓迎をしている。鉄鋼業界もあわよくば値上げの機会に利用しようと目論んでいると言われる。

 豊作であれば、国民の八割以上を占める農民に金が行き渡るわけで、農民層の購買力は増し、多少の濃淡はあるにせよ各業界に恩恵を施す事になろう。八億を超える農民が金を持ち、買うものを物色する図を想像するとインド経済の将来性が見えてくる。食品は十分足りて、時計、自転車、ラジオ、テレビ、バイク等の所謂工業商品に触手が広がってい行く。

 インドの経済開放は一九九一年に始まりその準備期間の二年前からモンスーンが連続して良いと言うのは、まさに天がインドに肩入れしているといえる。インドの今の不況を今回のモンスーンが吹き飛ばす事を期待しよう。

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