インドにおける知的所有権

2000/10/4

 知的所有権と思い出す事がいくつかある。

 インド語と日本語の共通点に文章の構造と母音調和がある。その言葉の類似性から、同じような地口や言葉遊びが生まれる。
 良くオウトリキシャの後ろに297と書かれているのを見かけるが、これは数字を発音するとドウノウサートなり意味はドウは2のそのままの意味で、ノウは複数を指す言葉で人で、サートは一緒との意味で、二人ずれの意味になる。これは、神との二人ずれの意味があり、お遍路さんの同行二人と同じ意味となる。言葉遊びがその意味まで同じように使われてる一つの例である。

 またトラックの後ろにエクバールムスクラ−ドウと書いてあるのを見かけるが、これはそのまま訳すと「一度は微笑んでくれても良いのに!」となる。エクは1でドウは前に述べたように2の意味で、文の始まりが1で終わりが2となっている地口である。従い訳も1と2を始めと終わりに置くとなんとなく雰囲気が伝わる。こんな訳ができるのも二つの言語の共通性による。

 も1つ洒落を。タタのトラックの先頭にはタタのマークが堂々とある。その後尾にタタと書いてある。これは追い越された側が読むと、英語のさよならの幼児語であるわけだ。お先に失礼サイナラとの洒落である。

 日本語の中にインド人に苦手な発音が二つある。1つは「Z」出ありもう1つは「TSU」である。ZOOをヅーと発音できずに、ジューとなる、座をザと発音できず、ジャとなる。これの無声音がTSUでツ出はなくトゥとなってしまう。

 これが、日本の商標、ブランド、商号、コピーライトに問題を持ちこむ事がある。

例えば東芝=TOSHIBAはまさにシバ神ヘの意味になり兼ねない。To Shibaである。

針谷(はりがや)と言う地名、苗字があるが、これをHARI GAYAと書くと聖なるガヤとなる。ガヤはブッダガヤとも呼ばれるビハ−ル州の仏教関係の聖地である。

 インドでは幼名をショートネームつけて呼ぶ事が良く行われる。アヌー、パプー、ミツー、ベシーとかである。娘の名前二つを繋げて、MITUBESHIを登録しようとしたインドの会社があった。交渉の結果取り下げさせた。

 ブランドネームの登録、WEBSITEの名前の登録、メールアドレスの登録など、最小の努力で不労所得を稼ごうとしている頭の良いインド人がいる。これとおぼしき日本の会社の名前、ブランド、商品名を登録、あるいはプロバイダーにレジスターしてそれを後から欲しがるところへ転売しようとするわけである。いくつかの日本の会社はインドのプロバイダーにWebsite名、メールアドレスを、他人のインド人にやられる前に、せっせとやっていると聞く。欧米系の会社でインド人から買わされたところもあると言うし、またインドの会社で苦い汁を飲まされたところもあるという。

 知的所有権に余り感心のなかったインド人が急に関心を持ち出し、また金になりうることを知った結果である。

 SONYとブランドの話をしましょう。これはアルワリアさんが大蔵次官であったときから聞いた話である。ナラシンハラオ首相と森田社長の話である。1991年12月に日本を訪問したラオ首相は森田社長と大使立会いの上で15分間の単独会談を行った。ラオ首相はソニーにインド進出を促したところ、森田社長は
 
  1. ソニーがインドへ進出するとなると100%で出たいが、電気製品についてはMax51%MAXとなっている
  2. カルカッタの眼鏡屋がソニーというブランドを使っている例があるがこのような国際感覚がない国には進出しにくい

の2点を申し述べた。

それに対し、ラオ首相はソニーが出てくるのであれば100%外貨を認める。第2の点については法の改正を行うと約束した。その後知的所有権について第一次の法の改正が行われ、ソニーは進出する事になった。

 この話はインドの外貨に対する歓迎の話として、また遅れていた知的所有権に対しインドが並々ならぬ関心を持っていることを明かす格好の例と言えよう。今1991年に国を開いたインドは、ガンジーの理想とした自給自足、セルフリライアンスからインターデペンデンスへと180度方向転換を行い、知的所有権に関してはWTOの条件を満たすべく最大限の努力をしているわけである。

 次に苦い話をしましょう。

 シャープの製品販売を行っていた代理店がシャープの名前をシャープが知らないうちに登録した。あとでシャープが製品を作ろうとしたとき、シャープの名前が登録をされているのに気付き、シャープがインドで生産する製品にシャープの名前が使えない事が判明した。結局数年渡る交渉の結果かなりの額で買い取る事となった。その後もシャープはその代理店と商売を続けている。社内には飼い犬に手をかまれたと言う感情論の議論もあるが、仕事は仕事と割り切って、現在でもそこの会社と取引を続けていると言う。
 したたかなインド人とやるには感情論ではうまく行かない。ビジネスライク態度も必要であろうか。

 JETROの発行している冊子の中に、インドの知的所有権について2つの冊子がある。
  
 1つは1999年3月に出された「模倣対策マニュアル−インド編−」である。そこには「工業所有権の所有者としての権利を保護するためには、事前に予防措置を取る方が、侵害行為や偽造講義が一旦発生してから、費用がかかり兆次間を要する訴訟手続きに忙殺されるより好ましい選択といえる。」の精神で貫かれて冊子が作られており、一読をお勧めする。

 も1つは2000年3月に出版された、「インドの工業所有権侵害実例・判例集」である。ケーススタディとして格好な判例が列挙されている。
そこに並んでいる会社の名前だけでもかなり参考になる。Alfred Dunhill Limited, シャープ株式会社、ダイムラーベンツ株式会社、スコッチウィスキー協会、マクドナルド、ソニー株式会社などの名前が見られる。この判例集の各ケースの最後に意見、助言が述べられている。判例は煩雑で読むのに労力が必要であるが、そこだけ読んでも参考になる。

例えば機密書類の扱いについて助言がある。

  • 機密書類の記録内容は、常に最新の状況にしておく。
  • 機密書類の原本は、耐火スチール・キャビネットに保管する。
  • 原本の写しは事務所で利用できるように保管する。信頼できる担当者が責任を持って保管し、書類が持ち出される場合には台帳に記録する。これらの書類は,許可のないものが持ち出し出来ないようにする。
  • 機密書類の原本、及びその移しには番号を採番する。
  • 機密書類のコピーを取り扱う権限のない者は、コピーを取れないようにする。
  • 原本やコピー書類の取り扱いで手違いがあった場合は、重大事とみなし迅速に対処する。

これなど、契約書、根据書類の取り扱いとして参考にすべきものと思う。

 

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